2020.06.23
こんにちは、リペアスタジオREFINEです。
6月に入り、あっという間に梅雨がやってきましたね。
湿度上昇による不快感、苦手な方も多いのではないでしょうか。
今回は、そんな梅雨と革の関係についてお話したいと思います。
目次
1.水に濡れてしまった…そんなとき、どうすれば?
外出先で、雨に降られて鞄や靴が…。
予期せぬ出来事で大切な皮革製品を濡らしてしまった、そんな経験お有りですよね。
水濡れした皮革製品への適切な対処法をお話しします。
1-1.まずは、水分を取り除く
皮革製品が濡れてしまったら、まず行うのは水分を取り除くことです。
そのまま放っておくと、濡れた部分が水染みや水膨れと呼ばれる水玉模様のような状態になります。
また、濡れた範囲が広い場合は乾燥するとその部分だけが硬くなってしまい、製品自体の型崩れを起こす場合も。
ですので、濡れたらまず「水分を取り除く」ことが鉄則です。
しかし、その際注意していただきたいことがあります。
1-2.水分を取り除く際に、絶対にやらないでほしいこと
大切なものを濡らしてしまった!と焦って、間違った対処をしてしまっては元も子もありません。
今から、やってはいけない対処法をお話しします。
ドライヤー
一番手っ取り早く乾きそうですが、これはNG。
革は、耐えられる温度以上の熱が加わると、硬くなり変形します。
特に、水にぬれた状態だとその耐熱温度は下がり、急激に縮みやすくなるのです。
布でこする
濡れた革を布で強くこすると、摩耗により革表面に傷が入り、色落ちや色褪せの原因となります。
直射日光に当てる
ベランダや日当たりのいい室内で乾かすのも避けてください。
直射日光によりカラカラに乾燥した革は、硬化・変形に加え最悪の場合、ヒビ割れてしまいます。
1-3.濡れてしまった時の正しい対処方法
皮革製品が濡れてしまった際の正しい対処法は、4段階です。
乾いた布で、優しく叩くようにして水分を除去
水分を布に移すイメージです。
この時、革へダメージを避けるため、強く叩きすぎないように。
バッグなどは型崩れを予防する為、乾いたタオルや新聞紙を中に詰める
新聞紙を入れる場合はインク移りの恐れがありますので、必ずタオルに包んでから入れるようにしましょう。
直射日光のあたらない、風通しの良い場所で乾かす
皮革製品はデリケートですので、陰干しが鉄則です。
人間が日焼けをするように、タンパク質が主成分の革も紫外線の影響を受けます。
革専用のクリームで栄養を補ってあげる
水分が中まで浸透している場合、革の繊維が乱れ内部の油分も抜けてしまっています。
ですので、必ずクリームなどで革の栄養を補ってあげてください。
熱を加えない・こすらない・丁寧に扱う、を意識して対処しましょう。
1-4. 注意素材「ヌメ革」
動物の皮を「鞣す」と革になります。
鞣しには、タンニン鞣しとクロム鞣しの2種類があり、そのうちタンニン鞣しが施された革で代表的なものが「ヌメ革」です。
ヌメ革はナチュラルな風合いが魅力である一方、水染みが目立ちやすい革として知られています。
特に、購入したばかりは要注意。
しばらく使用した革は、手の皮脂や内側からにじみ出る油分の膜で水をある程度はじきますが、新品はコーティングされていない状態なので、すぐ染みになります。
ですので、ヌメ革はなるべく濡らさないことが重要です。
2.濡れたまま放置すると…こうなってしまうかも?
2-1.これって、カビ?
濡れた皮革製品は正しいお手入れをしてから保管しないと、取り出した時に白い点々が…なんてことが起こりかねません。
なぜなら、皮革製品はカビが発生しやすいのです。
カビが生えてしまうメカニズムをお話しします。
そもそも、カビが増えやすい条件とはどのようなものかご存じでしょうか。
それは、温度・湿度・栄養、の3つです。
この3つがそろうと、カビは劇的に増殖します。
温度
カビが好む温度は25~28℃です。
カビは、私たちが気づかないうちに空気中へ胞子をまき散らしており、その胞子はアレルギーの原因にもなります。
湿度
カビは、湿度が65%以上になると発生し75%を超えてからは急激なスピードで増えます。
恐ろしいことに、90%以上になると数日で目に見えるまで生えてきてしまう場合も。
栄養
カビが増える為には、栄養も必要です。
汚れやほこりなど有機物質を栄養にして増殖しますので、タンパク質が主成分であり油分なども含まれる革は、いわばカビにとってご馳走のようなものなのですね。
2-2.革がベタベタする!
革のべたつき、これもよく聞くトラブルの一つです。
主に、「エナメル(パテント)」という革や合成皮革を使用した製品で多く起こることが知られていますが
何故なのでしょうか?
べたつきが発生する原因は、加水分解という現象です。
加水分解とはその名の通り、物が水分と反応して起きる分解反応のこと。
エナメル(パテント)は、クロム鞣しをした革の表面にウレタン樹脂などのコーティングを施したものなのですが、そのコーティング膜が加水分解を起こしやすいのです。
加えてウレタン樹脂は熱に弱いので…高温多湿の日本には向いていない素材といえるかもしれませんね。
また、一般的にエナメルは雨に強いと思われがちですが、メンテナンスがいらないわけでも、完全防水なわけでもありません。
エナメル表面には極小の穴がたくさんあり、そこから汚れや湿気が入り込んでしまうこともあります。
これは、エナメルでよく聞くひび割れトラブルにも関係している特徴なのですが…それはまた別のPageでお話しします。
2-3.対処法は?
これらトラブルを防ぐ一番の対処法は、普段からケアを心掛け、適切な方法で保管することです。
カビは3つの条件のうち一つでも取り除けば発生率を大幅に下げることができますし、エナメルに関しては適したケアを習慣化すれば購入時の状態を長く保つことが可能です。
しかし、この記事を読んでくださっている中には、「すでにカビが生えてしまった。」「革がべたついた状態になってしまった。」という方もいらっしゃいますよね。
それらの問題を解決するお手入れ用品はネットなどでたくさん販売されており、重曹やアルコールを使用した自己流の方法紹介もよく見かけます。
しかし、それを使用したお家での対処は表面上の応急処置であり、失敗のリスクが高いことを覚えておいていただきたいと思います。
大切な持ち物を確実な仕上がりで気持ち良く使用したい場合、その道のプロフェッショナルに預ける、というのも一つの選択肢。
当社でも、カビやべたつきのトラブルに関する修理を承っています。
熟練の職人が全力で大切な持ち物の修復をさせていただきますので、ご利用の際は安心して商品をお預けください。
お問い合わせはこちらから。
3.雨に備えるために…知っておいてほしい革のこと
ここからは、皮革製品が濡れてしまう前に、知っておくと得する知識をお伝えします。
3-1.水分に比較的強い革とは?
革は全般的に水に弱い!というのは、少し誤解があります。
水に弱いのではなく、濡れた状態を放置することでトラブルが引き起こされるのです。
実際、革靴や鞄を水で丸洗いすることもありますし、水を使用した汚れ落としを行うこともありますが、気を付けるべきポイントをちゃんと押さえれば、縮み・変形などリスクは最小限に抑えられます。
今回は、そんな革の中でも比較的水分に強い種類をご紹介します。
ガラスレザー
ガラスレザーはエナメルと見た目はよく似ていますが、違いは仕上げにあります。
ガラスレザーは、皮をクロム鞣しした後にガラス板やホーロー加工した鉄板に貼り付けて乾燥させ、表面の傷やしわを削ってから合成塗料を分厚く塗って最終仕上げとなります。
この分厚い合成塗料のおかげで、撥水効果や耐久性が生まれるのですね。
スエード
スエードとは、革の床面(裏側)を起毛させたもの。
起毛しているということは、水がついたとしても表面張力で中まで浸透しにくいということです。
また、商品の状態によりますが、防水スプレーをかけておくことで撥水性が増す場合も。
ちなみにその際は、スプレーをかけた後ブラシで少し毛を立たせるようにすると、さらに防水の効果が期待できます。
スエードは普通の皮革製品より効果持続性があるので、外出したら2~3日に1回、外出していないときには5日に1回くらいを目安に、防水スプレーをお使いください。
オイルドレザー
オイルドレザーの定義は複数あり、動物油で鞣された革のことや、
タンニン鞣しの工程で油分を豊富に含ませた革のことを指します。
通常の革より含まれている油分の量が多く、少量の水ならはじくことができます。
3-2.油分の付加をして、水分や汚れから革を守りましょう!
前述のとおり、表面に油分の膜ができればある程度の水や汚れから革を守ることができます。
ここでは、おすすめの皮革クリームと、その塗り方の一つをお教えします。
ご参考にしてください。
おすすめのクリーム
「M.MOWBRAY デリケートクリーム」です。
このクリームはオールマイティに使用でき、塗った後はさらさらした手触りになるのが特徴です。
価格もそこまで高くなく色々なアイテムに使用できるので、これがお家に一つあると便利ですね。
また、汚れ落としとして「Collonil クリーン&ケア」という革用のシャンプーもおすすめです。
汚れを落としつつ革を保護してくれる、素敵な商品です。
塗り方
クリームを塗る際に大切なのは、「量」です。
たっぷり塗った方が革へ栄養も大量に与えられて良さそうな気がしますが、それは間違い。
必要なのは、指先にのる程度の量です。それを、薄く全体に塗り広げていきましょう。
そして、風通しの良いところでクリームが革になじむまでしっかり陰干してください。
その後、綺麗な乾いた布で乾拭きをして、完了です。
塗る頻度
皮革製品を使用したその日毎に、クリームを塗ってあげなければならないわけではありません。
むしろ、多すぎる栄養は革にとって毒です。
何となく、「カサカサだな」「硬くなってきたかな?」と思った時にお手入れしてあげることが大切です。
季節で言えば、冬は乾燥しているので月2~3回、逆に梅雨時期は月1回、くらいでもいいかと思います。
3-3.防水スプレーで撥水効果UP!
防水スプレーの種類
防水スプレーは「フッ素系」と「シリコン系」の、2種類に分けることができます。
革には、湿気を吸い込んで吐き出すという呼吸のような性質があるのですが、シリコン系スプレーは表面にシリコンの膜を張って水をはじくタイプなので、この呼吸作用を妨げてしまいます。
一方で、フッ素系スプレーは細かいフッ素樹脂を革の繊維にしみこませて防水するので、呼吸作用を邪魔することなく水をはじけるのです。
皮革製品に使用するのはフッ素系のスプレーがおすすめです。
おすすめのスプレーとつけ方
おすすめの防水スプレーは「Collonil ウォーターストップ」です。
新品のヌメ革のような、風合いが変化しやすい皮革にも使用できます。
スプレーを実際に使用するときは、ほこりや汚れをブラッシング又は乾拭きで除去した後、風通しの良い屋外で、20~25センチ離して表面が軽く濡れる程度に円を描くようにスプレーしてください。
1点に集中してスプレーすると、しみになってしまうのでご注意を。
その後、フッ素を固定させるために30分ほど乾燥させれば、OKです。
一般的に、フッ素系の防水スプレーの効き目は長持ちしません。
しかし、繰り返し使うことで革の撥水性を高めることができますので、定期的な使用をおすすめします。
4.まとめ
湿気と革の関係、いかがでしたでしょうか?
ジメジメした梅雨が終われば、いよいよ本格的に夏がやってきます。
今後もお手入れについてのおはなしを更新予定です。
お楽しみに。
それでは、また次のPageでお会いしましょう。
Page.2