2020.10.20
こんにちは。リペアスタジオREFINEです。
今回は、古来から日本で使用されている鹿革と、スポーツで重宝されているカンガルー革についておはなしします。
目次
1.鹿革のおはなし
昔から武器や服に使用されてきた鹿革は、独特なふかふかの手触りが特徴。
その風合いは長く持続することが知られており、「柔らかさは人肌に最も近い」と言われているそうです。
そんな鹿革は「ディアスキン」「バックスキン」「エルクレザー」の3つにわけられます。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
1-1.ディアスキン(Deer skin)
通気性に富み湿気に強いことから、多湿な日本の気候に最適と言われているディアスキン。
一般的に、メスの鹿革を指す言葉として知られています。
手触りの柔らかさからレザーのカシミアとも呼ばれますが、柔らかいだけでなく丈夫さも特徴の一つ。
手袋に良く使用され、商品によっては洗うことができるので衛生面も安心です。
銀面が剥離しやすくひっかき傷がつきやすいという欠点はありますが、革自体に脂が多く含まれているので、比較的お手入れは簡単。
鹿の肌は、1本1本細かい繊維がたくさん集まり束を作っています。
さらにその繊維束がコラーゲンを巻き込みながら独特の絡み方をしていることで、他の動物の皮とは異なる特徴的な風合いを醸し出すそうです。
1-2.バックスキン(Buck skin)
一般的に、オスの鹿革の銀面を起毛させた革をバックスキンと呼びます。
鹿革は基本的に野生の個体を捕獲するので傷が入っていることが多い上に、オスは個体同士の喧嘩によってキズが入りやすいので、その傷を隠す目的で起毛させることが多いそうです。
その見た目から、起毛しているスエードやヌバックと間違われることも。
ちなみに、スエードとは牛革などの「床面」をこすって起毛させた革。
ヌバックとは、牛革の「銀面」をこすって毛羽立たせた革を指します。
(「床面」と「銀面」についてはこちらのページでおはなししています。)
見た目はそっくりなので、見分けるのはなかなか難しいですね。
また、綴り違いでバックスキン(Back skin)という床面(裏面)を加工したスエードやベロアを総称する言葉もあります。
オスの鹿革の銀面を起毛させたもの=Buck skin
裏(Back)を加工した革の総称=Back skin
少しややこしいですので、お気を付けください。
1-3.鹿革と環境問題
鹿は畑などに大きな被害を及ぼす「害獣」としても知られています。
鹿による農作物被害額は年間約54億円といわれていて、1年で捕獲される鹿の数は年々増加傾向。
捕獲された鹿のほとんどは、山に埋められるか焼却処分されてしまっていたそうです。
しかしここ数年、「命を無駄にしないように」という取り組みが活発化してきました。
捕獲後、適切に処理し食肉として「ジビエ料理」を提供するお店や、その皮を鞣しバッグや財布などに蘇らせるプロジェクトが各地で進行中。
古来から武具へ利用されたり足袋などの原料になっていた鹿革を、そういったプロジェクトや「甲州印伝」のような伝統工芸として、引き続き未来の私たちが上手く活用していきたいですね。
1-4.(番外編)エルクレザー
エルクレザーをご存じですか?
カナダ・アメリカ・フィンランドなどに生息するヘラジカの皮を鞣して作られますが、流通量は多くありません。
特徴は、「ディアスキンやバックスキンの倍程度の大きさがあること」そして「とても分厚いこと」。
そもそもエルクレザーは、森林保護の目的で狩猟されたヘラジカの皮を使用しますが、狩猟期間は9~12月と短いために生産量が安定しにくいです。
現在では、厚いクロム鞣しの牛革を手作業又は機械で揉み、粗めのシボを施したものをエルクレザーの代わりにする動きも出てきているようです。
2.カンガルーレザーって何?
その名の通り、カンガルーの皮を鞣したもの。
軽さと柔らかさを備え合わせ、繊維質が綿密なことにより強度は牛革の2倍ともいわれます。
薄く加工することが可能で、野球やサッカーのスパイクに利用されることが多い印象ですね。
しかし、オーストラリアの国獣なので年間の捕獲数が制限され流通量が少ない傾向に。
また、全てが野生のためキズが残ることが多いです。
そのキズも個性として活かしたスニーカーや革小物に加工されることもあるようですね。
3.まとめ
「革のおはなし」、今回のPage含めて多く更新してきましたがいかがでしょうか。
革の種類は数多くあり、それぞれ特徴があって面白いものです。
「革のおはなし」を通じて、革に興味を持ってくださる方が少しでも増えたら幸いです。
それでは、また次のPageでお会いしましょう。
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