2020.08.31
<さて、私は山羊と羊、どちらでしょう?>
こんにちは。リペアスタジオREFINEです。
今回は、山羊革と羊革についてのおはなし。
山羊と羊、漢字や見た目は似ていますが革に加工すると大きな違いがあるのです。
目次
1.山羊と羊の違い
そもそも山羊と羊はどう違うのでしょうか。
<山羊>
「山羊」はウシ科ヤギ亜科ヤギ属に分類され、雑食で好奇心旺盛・活動的な性質を持ちます。
険しい岩場でも、果敢に登っていってしまうのだそうです。
アンゴラ種とカシミヤ種以外の体毛は固く粗い直毛のため、毛皮には向きません。
<羊>
続いて、「羊」はウシ科ヤギ亜科ヒツジ属に分類され、草食で温厚、おとなしい性格。
1頭がパニックになるとそれにつられて群れ全体がパニックに陥ってしまうほど、臆病と言われています。
毛が直毛の種もいますが、多くは柔らかくカールした細い毛を持ちます。
ちなみに、山羊と羊の見分け方では「しっぽ」が一番わかりやすい基準だそうです。
毛を刈る関係でしっぽを切られてしまっている羊も多いようですが、「山羊はピンと上を向いたしっぽを持ち、羊のしっぽは垂れている」と一般的に言われています。
もし、判断に迷った時はご参考になさってください。
2.山羊革について
山羊革と言えば、丈夫で肌触りが良い革として有名です。
<ゴートスキン>
小さくてきれいなシボが特徴で、「ゴートスキン」と「キッドスキン」に分けられます。
2-1.キッドスキン
生後6か月以内の仔山羊の革。
繊維の密度がゴートスキンより細かく、染色した際は綺麗に発色することが多いそうです。
1枚の大きさが小さく流通量が限られるので、高級素材として扱われます。
2-2.ゴートスキン
生後6か月以上の大人の羊革を指します。
銀面のシボが個性的で美しく、綿密で硬い繊維のおかげで薄くしても強度は落ちません。
弾力性に富み耐摩耗性があるので、高級ブランドや革塗装など使用用途の多い革です。
<シボが特徴的で、ハリのある革質です>
シボ
革を作る過程で出来た、凹凸のこと。
革表面に傷がつきにくくなり、万が一傷がついてしまった時も目立ちにくくなるという効果があります。
使用する原皮や体の部位によってシボの形状は異なり、粒が細かいシボはキメの細かい背中や腰などの部位に見られ、均一に入っていることが多いです。
一方、大きくて深いシボは、首や肩など繊維が太い部位に見られます。
そんなシボの作り方には様々な種類がありますが、代表的なものは「手もみ」「空打ち」「シュリンク」「型押し」の4つ。
「手もみ」…その名の通り、職人が1枚1枚手でもんでシボを作る方法です。
「空打ち」…鞣し終わった革をドラムに入れて攪拌することで、自然な風合いのシボが出来上がります。
「シュリンク」…鞣し中に特殊な薬剤を使用して革を収縮させることで、シボを作り出します。
「型押し」…鞣し後の革に熱や圧力で色々な型をつける方法で、上記3つに比べてやや硬い印象があります。
原皮から革への詳しい加工過程は、革の基礎 ~代表的な鞣し(なめし)革の種類と仕上げ方法~でおはなししています。
良かったらご覧ください。
3.羊革について
羊が大きく2種類に分けられるのを、ご存じですか?
高緯度の寒冷地域で生活している「ウールシープ」と、温暖な地域に生息している「ヘアシープ」です。
そんな羊革は、革と思えないほどの軽さや柔らかさを持つので、身体へのフィット感の良さからジャケット・コート・手袋などの衣類で使用されることが多いです。
3-1.ウールシープ
「羊」と聞いて頭に思い浮かべるモコモコとした巻き毛の羊は、毛を取る為に品種改良されたウールシープ。
革に鞣すと寒さに備えた厚い皮下脂肪が浮きやハガレの原因となるため、主にムートン素材として使用されます。
細長く密度の高い毛におおわれているのですが、その毛に栄養分が多く取られてしまい革自体の繊維はあまり良い質とは言えません。
しかし薄くて柔らかくきめ細かい手触りと高い断熱効果から、防寒具として重宝されます。
ムートン
本来はフランス語で「羊」という意味ですが、現在は羊の毛皮を指す言葉として広く知られています。
ムートンはダブルフェイス加工されることが多く、表も裏も1枚で賄えることからとても軽くて暖かいという特徴を持ちます。
それに加えモコモコとしたビジュアルにも暖かい印象を受けるので、冬用ブーツやアウター・寝具に使用されることが多いですね。
ダブルフェイス加工
通常の毛皮は毛の部分を表面(フェイス)として使用するのですが、毛皮の裏側も綺麗に加工し表面として使用できるように仕上げる加工方法を、ダブルフェイス加工と言います。
ムートンの場合は裏側をスエードに加工することが多いです。
3-2.ヘアシープ
ウールシープに比べ、より高品質な革に仕上がるヘアシープ。
エチオピア等の温熱帯で成長するため、脂肪や毛が少なく革繊維の密度は高いです。
食肉用として飼育されており、原皮が手に入りやすいのも特徴。
綿密な繊維構造から、ハリがあり丈夫な革となります。
一般的なラムスキンの商品に使用されるのは、このヘアシープの革です。
<ラムスキン>
3-3.羊革の種類(月齢別)
羊革も、牛革と同様に年齢別で名前が変化します。
牛革については、革の基礎 ~牛革と豚革【カーフやピッグスキンなど”種類”とそれぞれの”特徴”】~で詳しく解説していますので、チェックしてみてください。
ベイビーラムスキン
生後半年以内の仔羊の革を指します。
病気や体力のない仔羊は生後1か月もしないうちに亡くなってしまうことがあり、その皮を鞣したものがベイビーラムスキンとなります。
流通量が少ないことから、最高級の革として有名。
ラムスキンよりもさらに軽く柔らかく滑らかな手触りが特徴です。
ラムスキン
生後1年未満の仔羊の革のこと。
シープスキンに比べ毛穴が小さくきめ細かく、しっとりと滑らかな手触りです。
<とても柔らかで、ずっと触っていたくなります>
ラムスキンの中では、ピレネー山脈の高原で飼育された仔羊の革「スペインエントレフィーノラム」が有名。
イギリスやニュージーランドなど他国産の羊革と比較して毛が細いので、毛穴の目立たない銀面が美しいという特徴を持ちます。
シープスキン
生後1年以上の成羊の革を指します。
特に、「エチオピアシープスキン」はレザーの中で最高峰ともいわれています。
エチオピア産羊の皮を鞣したこの革は、寒暖差の激しい生育環境によって皮繊維が太くなり強度が増しますが、銀面はキメ細やかで滑らかな手触りに仕上がることが特徴です。
4.まとめ
姿かたちは似ていても、革に鞣すと全く違う特徴を持つ羊と山羊。
それぞれの特徴を活かした商品もありますので、お買い物の際に意識してみると面白いかもしれませんね。
さて、ここで正解発表!
1枚目の写真、写っているのは「羊」でした。
暖かそうなモコモコの毛が見えるので、ヘアシープですね。
それでは、また次のページでお会いしましょう。
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