2021.07.31
結局のところ、革財布のお手入れ方法ってどれが正しいの?
そう思ったことはありませんか?
革財布のお手入れ方法はネットで調べればいくらでも出てきますよね。
私自身も革財布の手入れをしたくて色々検索していたのですが、
・お手入れ頻度はどのくらい?
・どの道具を使用すればいい?
結局どれを基準にしたらいいのか、真実がわからず困っていたのです。
そこで、身近にいる職人「FIX石川」に「プライベートで行っているリアルな革財布お手入れ法」を教えてもらうことにしました。
取材の際に、FIX石川には
「実際に、石川さんがプライベートで行っている方法を”ありのまま”教えてください!」
と強くお願いしてから、取材に臨みました。
取材で得た情報には
「ここまで公開して本当に大丈夫ですか?!」
と思うものもありましたが、包み隠さずお伝えしていきますね。
仕事として皮革製品を年間6000本以上修理するだけでは飽き足らずプライベートではオリジナル作品の作成を行い、「直す」も「作る」も知り尽くした職人“FIX石川”が普段行っている「本当に必要な基本の革財布お手入れ法」を、本人監修のもとご紹介します。
とにかくこれさえやっておけば安心!な方法、行う頻度、使用する道具などを、実際にFIX石川の自宅工房で撮影された動画を用いて解説していきます。
今後革財布のお手入れについて迷わない為に、日常的に皮革製品に触れている職人“FIX石川”が自身の知識に基づいてまとめたこの基本のお手入れ方法を、是非最後までご覧ください!
*今回のコンテンツは、エキゾチックレザー(ワニ革、ヘビ革など)や起毛素材(スエードやヌバックなど)、エナメル素材には当てはまりません。
2007年入社。職人歴14年
「すべてをFIX(修理)する」の信念で活躍中。
年間の修理本数は6000本以上で、セクションリーダーを務める。
趣味は、洋服・靴・鞄の制作。
家の一角を工房化するほど、根っからの職人気質。
日々技術の研鑽を怠らない。
目次
1. FIX石川曰く、「革財布のお手入れは半年に1回!」
革財布のお手入れは、半年に1回もしくは汚れが気になった時に行いましょう。
FIX石川によると、
「大切にするあまり、毎日クリームを塗って磨いて…としている話を聞きますが、それは革にとってよくありません」
とのことでした。
理由としては、
・革に栄養を与えすぎると、カビの発生しやすい環境になってしまうから
・クリームが浸透しすぎて、シミになるから
・クリームが表面に残って白くなるから
・革の風合いを壊してしまうから
の4点です。
革財布のお手入れは本来、革が「乾燥」したタイミングで行うのがベストです。
そして、革は2・3日といった短期間で一気に乾燥することはありません。
その為、半年に1回、と定期的なお手入れが最適というわけです。
もしくは、指紋などの汚れが気になったタイミングで行うのも良いですね。
どうしても毎日お手入れをしたいのであれば、柔らかい布でさっと乾拭きする程度がおすすめですよ。
革財布をお手入れするタイミングは、「半年に1回」もしくは「汚れが気になった時」で十分ということです。
2.【FIX石川流】革財布のお手入れ手順
さて、ここからはFIX石川直伝のお手入れ方法を具体的にお伝えします。
では、各工程を詳しく見ていきましょう!
2-1. 豚毛ブラシ でほこりを落とす
まずは、財布についているほこりを豚毛ブラシで落としましょう。
表面についたほこりを落とさないまま、この後の「デリケートクリームを塗る」という工程に進んでしまうと、綺麗に仕上がりません。
なぜなら、そのままクリームを塗るとほこりが巻き込まれてしまい、最終的な手触りが悪くなってしまうからです。
革財布のお手入れ後は、「スルスルした手触り」になることが理想ですよね。
ブラシでほこりを落とすかどうかで、最終的な手触りが決まるといっても過言ではありません。
さて、ネットでよく見る革製品のお手入れ手順には
「柔らかい馬毛ブラシでほこりを落とし、クリームを塗って、やや硬めの豚毛ブラシで磨く」
と書かれていることがほとんどです。
しかし、半年に一回行うお手入れの為に馬毛ブラシと豚毛ブラシ、両方所持する必要が本当にあるでしょうか?
それならば、財布専用の豚毛ブラシを一つ用意しておくことで、ほこり落としも磨きも両方できますよね。
また、日常的に革靴のお手入れをする方なら馬毛ブラシ・豚毛ブラシの2種類を所持していると思いますが、使用環境の異なる靴と財布ではお手入れ用のブラシを分けるべきなのは、理解いただけるでしょう。
つまり、革財布お手入れ専用の「豚毛ブラシ」を一つ購入しておくのがベストです。
ここで豚毛ブラシ使用上の注意点を一つお伝えします。
やや硬めの豚毛ブラシはあまりにも強い力で財布に当ててしまうと、革表面や財布についている金具に傷が入る場合もあります。
ブラッシングの際は、金具を避けて軽くほこりを払うように動かしましょう。
また、力を入れ過ぎないようにするためには、「ブラシの持ち方」を意識してみてください。
ぎゅっと握って持ってしまうと力が入りやすいですが、おすすめの持ち方であれば余計な力が入ることなく優しく財布のほこりを落とせるはずです。
デリケートクリームを塗る前には、豚毛ブラシで優しくほこりを落としましょう!
2-2. デリケートクリームを塗り、ブラシをかける
革用のデリケートクリームを塗り、ブラシをかけます。
デリケートクリームを塗る際に
・どのくらいの量塗ったらいいのか?
・まんべんなく塗るにはどうしたらいいのか?
と、迷う方も多いのではないでしょうか。
この2つの疑問について、解説していきます!
まず、量については「長財布片面に対して大豆1粒程度」が基準です。
革用のデリケートクリームは、「塗れば塗るほど良い!」というわけでなく、「適量を与えてあげることで革を長持ちさせることができる」というものです。
その為塗りすぎると、財布表面が白くなったりシミになったり…トラブルのもとになってしまいます。
FIX石川によると「長財布片面に対して大豆1粒程度で十分!」ということなので、三つ折り財布やミニウォレットなら、さらに少なくて大丈夫ということがわかりますね。
*デリケートクリームを塗る際は、必ず財布の目立たない場所でシミにならないことを確認してから行ってください。
次に、少ない量のデリケートクリームをまんべんなく塗るコツをお教えします。
ずばり、「クリームを直接手で塗って、ブラッシングすること」です。
この「直接手で塗る」というのは、FIX石川のこだわりの一つ。
指なら細かいところまで届きますし、布を使用しないので取った分のクリームを全て塗ることができます。
革用デリケートクリームの主要成分はロウや油脂なので手が荒れる心配もほとんどないですし、ついたクリームはハンドソープで簡単に落とすことができるので安心ですね。
ただ、
「初心者だけど、直接手で塗って本当に綺麗に塗れる?」
「洗って落ちたとしても、手が汚れるのは嫌だな」
と思う方もいるでしょう。
そんなときは、柔らかい布にデリケートクリームを取って塗り広げる一般的な方法から試してみるのも良いかもしれませんね。
塗り方に、正解不正解はありません。
自分にあった方法でお手入れするのが一番ですので、色々試してみてください。
そしてクリームを塗った後は、2-1で使用した豚毛ブラシで軽くブラッシングしましょう。
このブラッシングには、
①デリケートクリームを革になじませる
②余分なデリケートクリームを取り除く
といった2つの目的があります。
また、塗った後ブラッシングする度、毛にクリームがなじむので、「少し財布を綺麗にしたい」と思った時にこのブラシで軽くブラッシングするだけで、適度なツヤを出すことができますよ!
*ほこり落としとクリーム後のブラッシングを同じブラシで行えるのは、「デリケートクリーム」を使用した場合のみです。「乳化性クリーム」などは乾くとブラシの先で固まってしまうため、兼用することはできません。ご注意ください。
革用のデリケートクリームは、「長財布片面に大豆一粒程度」を目安に塗り、ブラシでなじませるのがおすすめです!
FIX石川のポイント:適量のデリケートクリームを塗った後は、ブラシでなじませよう!
2-3. 風通しの良い日陰で乾燥させる
デリケートクリームを塗った後は、風通しの良い日陰で30分ほど乾燥させましょう。
デリケートクリームを塗った直後は、まだ財布にすべてのクリームが浸透しきっていません。
その状態で表面を触ってしまうと、指紋がついたり一部分だけクリームが剥げてしまいます。
デリケートクリームを塗った後は、必ず乾燥させましょう。
ただし、早く乾かしたいからといって
・ドライヤーの温風を近距離であてる
・直射日光にあてる
といったことは、絶対にしないでください
なぜなら、革は過度な熱がかかることによって、縮んで固くなる性質を持つからです。
乾かすときは、「日陰で風通しの良い場所」に30分ほど置いておくのが最適です。
2-4. 柔らかい布で優しく磨く
30分乾かした後は、柔らかい布で優しく磨きましょう。
デリケートクリームを塗布した後にこの工程を行うことで、スルスルとした手触りと適度なツヤを出すことができます。
さて、「柔らかい布って具体的に何?」と思われる方もいるのではないでしょうか。
私も常々思ってきました。
柔らかい布というのは、ずばり「何回か使用した綿素材の布」です。
着古したTシャツや使い古したハンカチなど、「何回か洗濯してあるくたっとした綿素材の布=柔らかい布」というわけですね。
ただ同じ綿でも、「タオル」は繊維が太くごわごわしており磨きには適していませんのでご注意ください。
また、柔らかい布が手元に無い方には、眼鏡拭きなどの「マイクロファイバークロス」もおすすめです。
こちらは化学繊維ですが、名前の通り極細の繊維なので革を傷つけることなく拭くことが可能です。
財布のお手入れ仕上げは、柔らかい布(着古したTシャツなど)又はマイクロファイバークロスで優しく磨きあげましょう!
2-5.【お手入れ動画はこちら】
3. FIX石川が実際に使用している道具を大公開!
この章では、FIX石川が実際に使用している道具の紹介をします。
まず、2-1で登場した「豚毛ブラシ」です。
こちらは、なんとダイソーで購入したものです。
馬毛ブラシもあったのですが、財布磨きに適した形(横長)だった豚毛ブラシを選択したそうです。
最近の100円均一ショップは、幅広く商品を取り揃えているのですね…!
「100円でも、十分活用できるクオリティです!」とFIX石川も太鼓判。
是非、ダイソーで探してみてくださいね。
靴ブラシ(豚毛)
次に、2-2で登場した「革用デリケートクリーム」です。
こちらは、コロンブス社の「ブートブラックシルバーライン デリケートクリーム」です。
財布以外にも革靴にも使用できるので、1つ持っていると便利なクリームですね。
ブートブラックシルバーライン デリケートクリーム
*価格は2021年7月30日時点での表示になります
最後に、2-4で登場した「マイクロファイバークロス」です。
こちらも同じくダイソーで発見しました。
普段FIX石川は着古したTシャツを使用しているようなのですが、「マイクロファイバークロスを使用するなら、この商品もいいですね!」とアドバイスをもらいました。
110円(税込み)といえど商品のクオリティは侮れません。
是非、ブラシと一緒に入手しましょう!
マイクロファイバークロス
FIX石川の一言:気軽に楽しくお手入れしましょう!
3. まとめ
今回のまとめです。
・財布のお手入れは、半年に1回でOK!
・お手入れは、ほこり落とし→デリケートクリーム塗布→乾燥→磨き、という流れ
・デリケートクリーム前のブラッシングは必ず行い、塗布するクリームの量は「長財布片面で大豆1粒程度」
・デリケートクリーム塗布後は、ブラシでなじませよう
・乾燥は風通しの良い日陰で30分程度
・磨きは、使い古した綿の布を活用しよう
このコンテンツを通して、あなたの革財布のお手入れに関する悩みが消えたなら幸いです!